<Vol.11>「夏休みの課題図書 ―ウチダメンタルー」

子供達を指導していて、いつも腑に落ちない言葉がある。それは、メンタルが強い・弱いという言葉だ。皆様もよく使うと思います。負けず嫌いや我が強いのはメンタルが強い子、相手に強くいかないやシュートを外す子などはメンタルの弱い子ということか。

高校を卒業してすぐに鹿島アントラーズのスタメンで出場し、シャルケ04ではチャンピオンズリーグベスト4、日本代表では右サイドバックで活躍し度重なる怪我で昨年引退した内田篤人氏の著書「ウチダメンタルー心の幹を太くする術― <幻冬舎>」を取り上げます。
内田氏は、メンタルの上下の振り幅が少ないことが強い、上に下に振り幅が大きいと弱い、これを心の幹が太いと表現しています。なるほど!人は基本的にメンタルが弱い生き物だと思っています。まして子供はまだメンタルができていない幹が細い。心の幹は、様々な観察、気づきや多くの経験を通して太くなるものです。U12年代でメンタルの強弱でラベリングするのは早い、メンタルを強弱で語るのは適切ではない。これを読んでいて2人の選手を思い出しました。一人は皆があいつはメンタルが強いといわれた選手で、ある大会の決勝で負けて不貞腐れていました。私はまだまだだなと見ていました。その後、中学・高校と努力し成長し、大学でサッカーを続けています。もう一人はある大事な試合で点を取られ、切れたプレーをしました。私はすぐにその選手を下げ、試合そっちのけで叱りました。翌週に遠征大会がありそこでも試合に使いませんでした。「彼にどうする?」と質問したら、彼は「やります。大丈夫です」と答えてフィールドに出ていきました。これが正しかったかはわかりませんが、今、高校で活躍しているプレーを見るとメンタルの振り幅が少なくなっています。成長したな、嬉しい限りです。

著書の中で興味深い文章があります。メンタルと言って皆様はどこを指しますか。多くは心臓あたりを指すのではないでしょうか。海外の選手たちは頭を指すそうです。これは中田英寿氏も頭でしょうと対談で言っています(この対談も面白い)。それと心技体についてもわかりやすく説明しています。

子供たちの心の幹を太くする(将来、太くなる)にはU12年代の指導はどうしたらよいのでしょうか。やっぱりサッカーを大好きになってほしい、大好きなことは無我夢中でやるし壁があってもそれを乗り越える努力(行動)をする。それでは大好きにするにはどうしたらよいか。私は成功体験が一番だと感じています。それはシュートが決まった、相手からボールを奪えた、フェイントで抜けた、イメージ通りのパスが出せた等、無限にあるプレーの中に。成功するためには数知れずの失敗を重ねなくてはなりません。チャレンジする選手を育てることが一番だな。内田氏の著書を読んでU12年代指導の原点を再認識しました。

選手たちよ、チャレンジしろ!サッカーは無限だ!

最近はテレビでもよく見かける内田氏ですが、今後の活躍を期待しています。