月別アーカイブ: 2021年8月

<Vol.11>「夏休みの課題図書 ―ウチダメンタルー」

子供達を指導していて、いつも腑に落ちない言葉がある。それは、メンタルが強い・弱いという言葉だ。皆様もよく使うと思います。負けず嫌いや我が強いのはメンタルが強い子、相手に強くいかないやシュートを外す子などはメンタルの弱い子ということか。

高校を卒業してすぐに鹿島アントラーズのスタメンで出場し、シャルケ04ではチャンピオンズリーグベスト4、日本代表では右サイドバックで活躍し度重なる怪我で昨年引退した内田篤人氏の著書「ウチダメンタルー心の幹を太くする術― <幻冬舎>」を取り上げます。
内田氏は、メンタルの上下の振り幅が少ないことが強い、上に下に振り幅が大きいと弱い、これを心の幹が太いと表現しています。なるほど!人は基本的にメンタルが弱い生き物だと思っています。まして子供はまだメンタルができていない幹が細い。心の幹は、様々な観察、気づきや多くの経験を通して太くなるものです。U12年代でメンタルの強弱でラベリングするのは早い、メンタルを強弱で語るのは適切ではない。これを読んでいて2人の選手を思い出しました。一人は皆があいつはメンタルが強いといわれた選手で、ある大会の決勝で負けて不貞腐れていました。私はまだまだだなと見ていました。その後、中学・高校と努力し成長し、大学でサッカーを続けています。もう一人はある大事な試合で点を取られ、切れたプレーをしました。私はすぐにその選手を下げ、試合そっちのけで叱りました。翌週に遠征大会がありそこでも試合に使いませんでした。「彼にどうする?」と質問したら、彼は「やります。大丈夫です」と答えてフィールドに出ていきました。これが正しかったかはわかりませんが、今、高校で活躍しているプレーを見るとメンタルの振り幅が少なくなっています。成長したな、嬉しい限りです。

著書の中で興味深い文章があります。メンタルと言って皆様はどこを指しますか。多くは心臓あたりを指すのではないでしょうか。海外の選手たちは頭を指すそうです。これは中田英寿氏も頭でしょうと対談で言っています(この対談も面白い)。それと心技体についてもわかりやすく説明しています。

子供たちの心の幹を太くする(将来、太くなる)にはU12年代の指導はどうしたらよいのでしょうか。やっぱりサッカーを大好きになってほしい、大好きなことは無我夢中でやるし壁があってもそれを乗り越える努力(行動)をする。それでは大好きにするにはどうしたらよいか。私は成功体験が一番だと感じています。それはシュートが決まった、相手からボールを奪えた、フェイントで抜けた、イメージ通りのパスが出せた等、無限にあるプレーの中に。成功するためには数知れずの失敗を重ねなくてはなりません。チャレンジする選手を育てることが一番だな。内田氏の著書を読んでU12年代指導の原点を再認識しました。

選手たちよ、チャレンジしろ!サッカーは無限だ!

最近はテレビでもよく見かける内田氏ですが、今後の活躍を期待しています。

<Vol.10>「夏休みの課題図書 ―教えないスキル その2―」

佐伯氏は「指導者は選手の学びのチャンスを創出するファシリテーター(潤滑油)にすぎない」と言っています。指導者は、我が強く自分の思うスタイル、理論のこだわりが強い。それが強すぎると視野が狭くなり他者の意見を受入れいれられなくなり、指導者の成長が止まってしまう。私たち指導者がよく口にする言葉で「勝つ・結果・相手」。「勝つには…」や「相手のフォワードが…」は選手がやること、実は指導者にはどうにもできない。また、「プレスが遅れているぞ」、「左が空いているよ」等は指導者が自分の答えを押し付けている。選手が考える機会を指導者が削除している、選手を主語にしないといけない(自戒の念)。
そこでビジャレアルの育成は選手に問いかけ、オープンクエスチョン「どうして?」「どのように?」を行い、選手は何をやっても、何を言っても受け入れられると心を開く。安心安全な環境を提供することこそ選手は成長できるのです。

「失敗できる環境を提供できることが選手として学びのチャンスを与える」

「日本のスポーツ界は一生懸命に頑張る文化はあるけど、選手が自ら考えて行動する文化がない」

これは、日本の教育の問題です。根が深い、でもここに挑戦しないといけない。

また、子供の成長スピードは個々で異なりその差は激しい。この年代は我慢の連続だと思う

  • 主観だけで考える癖をなくす
    「この選手はこういう選手」と主観でラベリングしない。
  • 自分の考えを一方的に伝達しない
    一方的に伝達するだけでは選手は何も考えず言うことを聞くだけ。
  • 答えに正解はない
    まさにその通りで、サッカーの答えに正解はない。不確実なスポーツだからこそ1点を入れる(入れさせない)ことのなんて難しいスポーツか。

そして、日本とスペインの練習時間の長さの違いです。スペイン(U12年代)では、週3日、1回当り75分、冬休みや夏休みもしっかり取る。指導者はより内容の濃い質の高い練習を用意するのが力の見せ所だそうです。また試合では、全員の出場が義務付けられていて、サスペンションが課せられる。日本では考えられない。日本はたくさん練習したら上手くなるという呪縛に皆が縛られている。このことはイチロー選手が高校野球を指導しているテレビ番組の中でも同じようなことを言っていました。

この著書の中には、気づきと内省がいっぱいあります。何度も読み返して咀嚼してこれからの育成に生かしていきたいと考えています。

 

いつか話を聞きたいな、いっぱい質問したいな。

日本サッカーの発展には育成しかない、これからも頑張ってください。

ありがとう、ゆりこさま!

<Vol.9>「夏休みの課題図書 ―教えないスキル その1―」

小学生時代、夏休みの宿題が出され遊びに夢中になり、夏休みの終わりが近づいて慌てて片付けていたことを思い出します。このコロナ禍でステイホームでもあるので、今回は夏休みの課題図書の感想を記したいと思います(笑)。

皆様、佐伯夕利子さんをご存じだろうか。佐伯氏はアトレティコ・マドリード女子チーム監督やビジャレアルCF育成責任者、そして2020年からJリーグ常勤理事で海外サッカーの育成に身を置いた素晴らしい女性の指導者です。佐伯氏が「教えないスキル ―ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術― <小学館新書>」を発刊しました。ビジャレアルCFのカンテラ(育成組織)は、スペイン代表に4名(2019年11月召集)、年代別代表の全カテゴリーに選手を送り込み、トップチーム25選手のうち11名がカンテラ出身(2019シーズン)で、スペインや欧州で最も堅実な育成機関です。

結論から言うと、指導者としての刺激や気づきが溢れていて半分は内省ですが、指導者の立ち位置、選手との関わり方など共感できることが多く勉強になりました。この育成方針が、本クラブで少しでもできれば成長を続ける選手を育てられる。サッカー選手を諦めても新しい道を歩き続ける選手を育成できると強く思いました。

冒頭、ショッキングな現実の直視から始まります。子供たちはプロサッカー選手に憧れ、親もプロの道を望みます。現実は、プレミアリーグのクラブでは9歳でアカデミーに入団する子供でトップチームデビューするのは1%に満たない。フットボーラー150万人のうちプレミアリーグでプレーしていたのは180人その確率は0.012%です。スペインではプロになれるのは2600人に1人で、その確率は0.038%です。プロへの道は非常に厳しい。そして、引退後5年で60%の選手が自己破産をしているそうです。でもサッカーには夢があり、楽しくて面白し、人を熱狂させるスポーツです。この現実から、ビジャレアルCFの育成は選手でなくなった時に責任を持ち人格形成にシフトしたのです。これから感想を記すが、育成に興味のある人はぜひ手に取って読んでほしい。では、次回に続きます。