<Vol.9>「夏休みの課題図書 ―教えないスキル その1―」

小学生時代、夏休みの宿題が出され遊びに夢中になり、夏休みの終わりが近づいて慌てて片付けていたことを思い出します。このコロナ禍でステイホームでもあるので、今回は夏休みの課題図書の感想を記したいと思います(笑)。

皆様、佐伯夕利子さんをご存じだろうか。佐伯氏はアトレティコ・マドリード女子チーム監督やビジャレアルCF育成責任者、そして2020年からJリーグ常勤理事で海外サッカーの育成に身を置いた素晴らしい女性の指導者です。佐伯氏が「教えないスキル ―ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術― <小学館新書>」を発刊しました。ビジャレアルCFのカンテラ(育成組織)は、スペイン代表に4名(2019年11月召集)、年代別代表の全カテゴリーに選手を送り込み、トップチーム25選手のうち11名がカンテラ出身(2019シーズン)で、スペインや欧州で最も堅実な育成機関です。

結論から言うと、指導者としての刺激や気づきが溢れていて半分は内省ですが、指導者の立ち位置、選手との関わり方など共感できることが多く勉強になりました。この育成方針が、本クラブで少しでもできれば成長を続ける選手を育てられる。サッカー選手を諦めても新しい道を歩き続ける選手を育成できると強く思いました。

冒頭、ショッキングな現実の直視から始まります。子供たちはプロサッカー選手に憧れ、親もプロの道を望みます。現実は、プレミアリーグのクラブでは9歳でアカデミーに入団する子供でトップチームデビューするのは1%に満たない。フットボーラー150万人のうちプレミアリーグでプレーしていたのは180人その確率は0.012%です。スペインではプロになれるのは2600人に1人で、その確率は0.038%です。プロへの道は非常に厳しい。そして、引退後5年で60%の選手が自己破産をしているそうです。でもサッカーには夢があり、楽しくて面白し、人を熱狂させるスポーツです。この現実から、ビジャレアルCFの育成は選手でなくなった時に責任を持ち人格形成にシフトしたのです。これから感想を記すが、育成に興味のある人はぜひ手に取って読んでほしい。では、次回に続きます。